受賞者からの声│愛媛県立中央病院 小児医療センターセンター長 石田也寸志先生(授賞時は聖路加国際病院所属)2014/09/02

* 石田 也寸志 先生 愛媛県立中央病院 小児医療センター センター長(授賞時は聖路加国際病院所属)は、小児白血病疫学研究グループ主任研究者として「小児白血病の臨床疫学研究」をテーマとして平成23年度の日本白血病研究基金「2011年度 ザ・レジェンド特別賞」を受賞された。  ザ・レジェンド特別賞とは、青木功氏、日野皓正氏、王貞治氏の呼びかけによる、「ザ・レジェンドチャリティーゴルフ」からのチャリティー募金を財源とした特別賞で、子供の白血病克服へ向けた研究の基盤整備や基礎、臨床研究者の育成を通じて子供たちに明るい未来をプレゼントするために設立されました。*
聴き手:小川 公明 (NPO法人 白血病研究基金を育てる会)

―小児白血病疫学研究グループについて―

疫学研究は非常に幅広く、結果が得られるまでに非常に長い時間を要します。一人の研究者が担うには余りにも大きな仕事になります。そこで、日本小児血液・がん学会で活躍している先生との共同研究体制が必要になりました、参加施設は、聖路加国際病院、東京医科歯科大学、茨城県立こども病院、独立行政法人名古屋医療センター、日本医科大学、福島県立医科大学の各小児科の先生方で構成され、石田 也寸志 先生が主任研究者を担われています。

―受賞テーマについて解説頂いた―

おもに4つのテーマを行っています。

「小児急性リンパ性白血病後の2次がん症例の疫学的研究」と「小児がん診断後の2次がん発症例の疫学研究」
「分子疫学関係[CLIC(childhood leukemia international consortium)と日本小児血液・がん学会との共同]」
「日本小児血液・がん学会登録による白血病登録症例の疫学的解析」
「小児がん発症に対する福島原発事故の影響を検討する疫学研究の提案」

全ての研究が、小児白血病患者の登録および、長期にわたってのフォローアップがキーになるテーマでが、逐次得られた成果は、学会を通じて社会に還元していく計画になっています。

―日本の疫学研究は遅れているのですか―

日本には、疫学研究者が少ないと思います。その少ない研究者も、成人の生活習慣病等の研究が大半で、小児白血病を専門にしている疫学研究者は、見当たりません。また、疫学研究は、成果が得られるまでに長期間かかることから、日本では、国などの研究予算が即効性のある研究テーマに優先される傾向が残念ながら存在します。

疫学研究の基本は、対象患者がもれなく登録されることが重要です。イギリスでは、1960年代から全ての小児がん患者の登録が始まり、膨大な基礎データが蓄積されています。

米国では、国を挙げての小児がん登録はないものの、サバイバーに関しては、代表的な病院によるCCSS(childhood cancer survivor study)に十分なデータが蓄積され既に膨大な疫学研究データが出版されています。イギリスは、疫学研究によるエビデンスに基づく医療政策上の投資が行われており、効率的医療が既に実現しています。しかし、日本では、日本小児血液・がん学会が患者登録を開始してまだ間もないのが現状です。

―2011年度 ザ・レジェンド特別賞受賞のお気持は―

小児の白血病撲滅を長期的視点で支えて下さる「ザ・レジェンド特別賞」を受賞できたからこそ日本において、「小児白血病の臨床疫学研究」グループを立ち上げることが出来ました。さらに、欧米で開催されている研究会やシンポジウムへの参加により小児白血病の疫学研究のパイオニアとの交流が実現し、より緻密な研究計画でスタート出来たことはとても幸運でした。

ザ・レジェンド特別賞の財源をご提供くださった、青木功氏、日野皓正氏、王貞治氏に心よりお礼を申し上げます。

*白血病の原因を突き止めるには、実験おこなう方法もあるが、データ裏付けされた、疫学研究から原因を絞り込む方法もある事に気付かされた。より良い治療を探すためには疫学研究が必要だと痛感した。*

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